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星をみたあの夜の約束、
​いまもまだ
続いているよ。

STORY

物語について

1999年――

結局、世界は終わらなかった。

ノストラダムスの大予言も、人類滅亡も、テレビの向こう側の話だった。それなのに、あの頃の僕たちは確かに“なにかが終わる”気配の中を生きていた。​

​

あの日から二十年以上だ。

”桜サンバースト”

 

夢、出逢い、約束――限りある時間の中で交差した存在たちは、

互いの輪郭を滲ませながら、

やがて現実と物語の境界さえ静かに揺らし始めていく。

​​

この物語は、

“失くした時間”の続きを探し続ける旅なのだろうか。
それとも、夜空へ消えたはずの光のように、誰かの心で今も瞬き続けている永遠なのだろうか。

章立て

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序章

時封

神をも憎みながら朝霧は四十三歳になった。生きてはいる。けれど、自分がまだこの世界に存在しているのかさえ曖昧なまま、時間だけが過ぎていく。しわくちゃのシャツ。食べかけのカップ麺。止まったままの人生。そんなある日、偶然にも零したミルクが棚の奥へ流れ込んでいく。その白い筋を追った先で“それ”を見つけてしまう。あの日、預かった大切なものだった。触れた瞬間、封じ込めていたはずの記憶が静かに軋み始める。1999年――世界の終わりが囁かれていた、あの日へと。

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第一章

染め始まり

父の死を前にしても涙ひとつ流れなかった少年・朝霧は、自分のどこかが壊れていることを知っていた。家庭も居場所もなく、鑑別所へ流れついた彼に、裁判官は「あの世に持っていけるものを探せ」と言い残す。十六歳の冬。ギターと僅かな金だけを握りしめ、都会に上京した。そこで彼を見つけたのは、弟の面影を重ねる少女・安土だった。“失くしたもの”しか持たなかった少年が、初めて誰かの優しさに触れながら成長していく。

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第二章

​馨しく

都会暮らしにもなれたころ、路上ライブと安土との暮らしの中で、“居場所”という温もりを知り始めていた朝霧。夢は憧れではなく、自分の手で掴みにいく現実へと形を変えていく。一方で彼女もまた、弟の面影を朝霧へ重ねながら、止まっていた時間の先へ歩こうとしていた。そんなある日、一冊の本を届けるため訪れた頓宮のアパートで、朝霧は言いようのない違和感に触れてしまう。以前から知っていたはずなのに、目の前にいる頓宮は、“今まで”とはまるで違っていた。それでも、なぜか懐かしさが残る。それぞれの孤独が、誰かの馨しさによって少しずつ溶け始める。

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第三章

蒼き零等星

時間は流れ、かつての少年(朝霧)は別人のようになっていた。肩まで伸びた白髪、黒いスーツ、身体に刻まれた死神のタトゥー。誰もが「あの日から変わった」と口を揃える。親友である霜月亮との誓いを胸に、路上から始まった音楽。それは、やがて大勢を渦の中に巻き込んでいく。しかし、朝霧が追い続けていたのは夢でも成功でもなかった。叶えなければならない約束。置き去りにされた春。そして、もう戻れない誰かの時間。辿り着いてしまった最果て。その光の中に、朝霧は何を見つけたのだろうか。

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第四章

弥生の月

父を失い、母の再婚によって裕福な新しい生活を手に入れた南条。しかし心は満たされなかった。変わっていく母、過去を忘れようとする大人たち。そして、ただ一人変わらず隣にいてくれる姉。二人は母と義父へのクリスマスプレゼントを買うため、かつて暮らした街へ向かう。それは家族の思い出を辿る小さな旅になるはずだった。けれど、その帰り道。何気ない別れの一瞬が、二度と戻れない運命の境界線へと変わる。雪が降り始める夕暮れの都会。失うはずのなかった大切な存在と、少年は静かに引き裂かれていく。

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第五章

邂逅

本屋で交わした一通の手紙をきっかけに、朝霧と頓宮の距離は少しずつ近づいていく。夕暮れの陸橋。何気ない会話。返事を書くための夜。それまで別々だった日常は、いつしか同じ景色を共有するようになっていた。その時間は言葉にならない違和感そのもので、知っているはずなのに知らない。近づいているはずなのに掴めない。そんな曖昧な感覚を残したまま、朝霧・安土・南条・頓宮の四人は長野への”卒業旅行”へと準備を始めた。春の風に運ばれるように、それぞれの運命が静かに交差し始める。

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第六章

放射線状の褪紅

長野県――某所。卒業旅行のため集まった四人は、湖畔のペンションで数日間を過ごすことになる。笑い声の絶えない旅だった。くだらない言い合い。夜更けまで続く会話。湖畔を渡る風。当たり前のように続いていく時間。その中で交わされた約束や言葉は、まだ誰の心にも特別な意味を持っていなかった。夜空を流れる星々は、放射状に軌跡を描きながら闇へ消えていく。けれど、その光が本当に消えたのかどうかを知る者はいない。これは、四人が同じ空を見上げていた”確か”な記憶でしかない。

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終章

散り始まり

人は、どこから存在しているのだろう。生まれた瞬間からなのか。誰かに名前を呼ばれた時なのか。それとも、誰かの記憶に残った時なのか。桜は散る。流星も夜空から消えていく。けれど、本当に消えたのだと証明できる者はいない。忘れたと思っていた言葉が蘇ることがある。失ったはずの誰かが、ふと隣にいるような気がすることもある。ならば存在とは、肉体のことを指すのだろうか。時間のことなのだろうか。それとも――。この物語は、失われた青春を追いかけた記録ではない。誰かを想うことが、その人を生かし続けるのなら。僕たちは今も、同じ星空の続きを生きているのかもしれない。

登場人物

僕たちは、誰かの心で瞬き続けるために出逢ったのかもしれない

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夢を追う青年

朝霧伯:ASAGIRI-HAKU

少年鑑別所を経て、16歳で単身上京した。持っていたのは、ギターと小銭。言葉と、怒り。どこへ向かうかも分からない、希望のような漠然だった。その街で、噴水のそばに安土華代がいた。偶然というには出来すぎた出逢いが、彼に初めて「未来」という概念を与えた。華代との生活の中で南条彩薫と出逢い、頓宮夏帆と出逢った。仲間たちの声が、次第に増えていくファンの視線が、舞台の熱が――朝霧の存在を証明してくれていた。しかし夢を追う途上で、頓宮との運命に翻弄されるうち、存在とは何かを深く考えるようになっていく。彼女との約束を果たした時、音楽が止んだ。仲間が散った。証明してくれるものが何もなくなったとき、彼は気づく――自分が透明になっていると。そして、時間は止まった。

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夜空に願いを託す少女

頓宮夏帆:TOMIYA-KAHO

どこか冷めた人間にも見える。しかし、それは他人との距離を測るためではなく、誰かの痛みに不用意に踏み込まないための優しさだった。そんな頓宮夏帆は、運命の悪戯のように、あの日、噴水前で朝霧と出会ってしまう。それから彼女は、まるで当たり前のように朝霧のアルバイト先へ顔を出すようになった。気づけば同じ時間を過ごすことが増え、同じ景色を眺めることも増えていく。けれど、それは恋愛感情とも友情とも少し違うものだった。

遠い過去から結ばれ、遥かな未来へと続いている――切れることのない一本の糸。

互いにその意味を知らぬまま、二人は少しずつ惹かれるように歩み寄っていく。

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――「流星群が見たい」

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誰よりも物語を見つめている人物

南条彩薫:NANJYO-SAYUKI

偶然にもあの日、朝霧を見つけた。その存在は必然の連続でしかない。南条を溺愛する姉に、自身を投影する彩薫という存在。それは性別の枠を超えたものであり、彼の存在の全てのようなものだ。朝霧たちとの出逢いの中で「夢は育つ」。誰よりも優しく、誰よりも人の心の揺らぎに敏感な青年。どこか掴みどころのない柔らかな雰囲気とは裏腹に、仲間たちを見守り続ける確かな眼差しを持っている。星空を見上げることが好きな彼は、変わり続ける世界の中で、それでも変わらず輝くものを信じていた。朝霧や頓宮、華代との日々は、彼の人生に新たな意味と憧れを与えていく。

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帰る場所であり続けた女性

​安土華代:AZUCHI-KAYO

朝霧が上京直後に出逢った女性であり、行き場のない彼を自宅へ迎え入れた恩人でもある。明るく奔放で、思ったことをそのまま口にする性格は周囲を振り回すことも多いが、その根底には深い愛情と強い責任感がある。過去に抱えた喪失を胸に秘めながらも、誰かのために笑い、支え続けることを選んだ人物。朝霧や頓宮、南条との時間を通して、彼女自身もまた過去と向き合いながら前へ進んでいく。賑やかな輪の中心にいながら、人の居場所を守ろうとする――そんな優しさを持った女性。​​​​​​

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